1株当たり純利益の謎
Posted by Ecolonomy at August 9, 2004 11:16 AM
企業の経営成績を記した通信簿が決算短信です。中間と通期の年二回、決算短信は発表されますが、第1四半期と第3四半期にも概況が発表されるようになりました。私はこの企業の通信簿を見る事が大好きで趣味になっています。以前は一度成績が発表されると、次の通信簿が出るまで6ヶ月間待たなければなりませんでしたが、今では1Qと3Qにも大まかな成績を知る事ができ、通信簿を見る楽しみの頻度が倍に増えました。
通信簿の採点基準
通信簿で成績をつける際には、客観的で実情を反映した基準で採点することが理想です。先生の気まぐれや依怙贔屓で採点されれば生徒はたまったものではありません。また、実情を反映しない通信簿には何の価値もなくなるでしょう。
かつて企業の通信簿はあまり実情を反映しない代物でした。都合の悪いものを子会社に押し付け立派な内容に見せかけたり、実際には価値の無い資産が物凄い金額でB/Sに計上されていたり・・・。しかし近年の会計ビッグバンにより時価評価や連結が重視された結果、以前に比べて遥かに実情に即した通信簿になりました。
1株当たり純利益
しかし今の決算短信にも、イマイチ腑に落ちない点が私にはあります。腑に落ちないといっても、客観的な算定基準が開示されており、問題があるとまでは思っていません。ただ、「会計基準を変えてくれるともっと便利なのに・・・」と思っている程度です。それは、1株当たり純利益の算定方法についてです。
現在、1株当たりの純利益は、
と計算することになっています。自己株式を除いて考える点は尤もだと思うのですが、なぜに期中平均数で計算するのでしょう?現在の株式数と期中の平均株式数が異なる事は多いのですが、投資判断をする際に期中の平均株式数など使いません。現在の株式数あたりで考えることが普通です。もちろん、一定期間の通信簿の算定法に現在の株式数などを加えてしまうと整合性が取れなくなります。しかしせめて、期中でなく期末の株式数で算定する事はできないのでしょうか?期末の株式数で表示されていると、2度手間で再計算する必要がかなり減るのですが・・・
ちなみに利益でなく、「1株当たり純資産額」の方は期末の株式数で計算されています。
同じ通信簿なのにどうして利益の算定には期末でなく期中を使うのでしょう?
なぜ利益の場合は期末ではないのか
結論を先に書くと、素人の私には理由がわかりません。財団法人財務会計基準機構企業会計基準委員会(ながい・・・)のホームページなどもチラッと見てみたのですが、会計基準が決まった理由についての説明は掲載されていませんでした。
ただし!ホームページを見て素人の私が驚いた事に、この基準は、その名も「一株当たり利益(EPS)専門委員会 」なる専門委員会の議論を経て設定されています。合理的な理由で期中をつかっているに違いありません。また最近(8月5日)、一株利益に関する講義内容が出版されているではあーりませんか。ひょっとすると、期中を使う合理的理由についても詳しく書かれているのかもしれません。(み、みたい・・・でも定価2,300円・・・・・・)
| 会計基準基礎講座シリーズNo.3「1株当たり当期純利益に関する会計基準等について」 | |
| [定 価] 2,300円 (会員1,900円) (税込み、送料別) (B5判、168頁) |
平成14年8月から平成15年2月にかけて、東京、名古屋及び大阪において企業財務ご担当者、特に、初任者の方を対象として開催された、当財団主催「会計基準基礎講座」の講義内容に加筆・修正を加えて、取りまとめたものです。 本書は、当日の講義で使用した資料を左ページに配し、右ページにその説明を記載し、EPSの基本的な考え方や会計基準の概要、具体的な計算の方法など、初学者にも無理なく理解できる構成になっております。 また、本基礎講座の当日の講義を収録したCD−ROMとセットになっております。 (主な項目) ■1株当たり当期純利益(EPS)等の基本的な考え方 ■1株当たり当期純利益に関する会計基準の概要 ・開示の目的 ・適用範囲 ・EPSの算定 ・潜在株式調整後のEPSの算定 ・1株当たり純資産額の算定 ・開示等 ■国際比較 ■従来の方法との主な相違点 ■参考資料 |
はじめまして。
いつも大変に参考にさせて頂いております。
いきなりで恐縮ですが、同じような部分に興味を持っておりますので、カキコさせて頂ければと思います。
期中平均株式数を用いる理由についてです。
「利益」は一期間を通じての成績であるため、これを割り算するときには、同様に一期間を平均した株式数を用います。
また、「純資産」は一時点での成績であるため、これを割り算するときには、一時点(つまり期末)での株式数を用います。
つまり分子と分母の時間的な性質を揃えているわけですね。
使い勝手の良い悪いはともかくとして、基準によって定められた方法の趣旨はこんな感じだと私は理解しています。
上記は、おそらく偉い学者の方々が決めた方法ですので、我々投資家からすればもっと使い勝手のある方法もあるかもしれませんね。
はじめまして。
書き込みありがとうございます。
>「利益」は一期間を通じての成績
>「純資産」は一時点での成績
>つまり分子と分母の時間的な性質を揃えているわけですね。
>基準によって定められた方法の趣旨はこんな感じだと私は理解しています。
なるほど。そういう論理なのですか〜
とすると例えば、決算短信の項目に「一株当たり純資産増加額」という項目をつくりなさい、という規則が将来仮にできたとすると、この場合には恐らく期中平均株式数で割っちゃうんですね。。。
>我々投資家からすればもっと使い勝手のある方法もあるかもしれませんね。
情報開示日現在の株数とか将来の株数で考える投資家が多いと思いますが、流石にこれだと過去一定期間の通信簿としては不適当ですしね。ただ期中平均よりは期末で統一してくれた方が私には使い勝手がよいですし、時間的な性質が揃っていなくても特に不都合があるとも(今は)思わないです。潜在株式調整などでも時間的に揃っていない気がします。ただ、まだ考察が足りない浅はかな意見かもしれないので、今後も色々と考えてみようと思いました。
計算自体は簡単なのですが、基準が決まった理由まで考えてみると色々と面白いですね。
はじめまして。私は会社で経理をやってましていつもEPSを計算してます。期中平均で計算するのは面倒だし、普通の人にはわかりづらいなあ、とつねづね感じてました。
ただ、期中平均を使用するのは「たかし」さんの指摘のとおり、期間業績の報告であれば、しょうがないかなあ、とも思います。
たとえば、次のような例を考えてみればどうでしょうか?
例1:期首の払込資本が100(株式数も100)、上半期の利益を50とします。
下半期にはマーケットの拡大が見込まれるので、事業資金を増やすため増資100(発行株式数も100)して下半期の利益が100になったとします。
例2:期首の払込資本が100(株式数も100)、上半期の利益を50とします。
下半期にはマーケットの縮小が見込まれるので、とりあえず事業を半分に縮小して不要になった事業資金は自己株の取得に50(取得株式数も50)使います。下半期の利益は25になったとします。
期中平均を使うと例1,2ともEPS1になります。
期末株式だと例1はEPS0.75(利益150/期末株式200)、例2はEPS1.5(利益75/期末株式50)になります。
みなさんはどのように考えますか?
しげさん、はじめまして。大変丁寧な御説明ありがとうございます。今まで疑問だった点がクリアーになり感激です。
そうか〜。そうですよね。期中平均を使うべきなんですね。具体的に2つの例を対比して頂いてようやく期中平均が使われる理由が実感できました。
いやー、それにしても、コメントって重要ですね。改めて思いました。経済について大学等で勉強したわけでもなく、ネット上以外で他の方と株の話をすることも皆無なので、ブログをやっていなければ理由は一生理解できないままだったかもしれません。計算自体は小学生の算数なのに。。。「聞くは一時の恥」といいますが、自分が理解できなかった点を晒してよかったです。たかしさん、しげさん、的確な御説明を頂き本当にありがとうございました。
>みなさんはどのように考えますか?
んーと,投資家にとっては将来の業績がどうなるかがすべてですから,その目的に沿って指標を選ぶことになりますよね.ということであれば,その会社にとって,株式数が増減するというイベントがしょっちゅうあるのかどうかが分かれ目と思います.
毎年ファイナンスしているような会社は私の好みではありませんので,そういう会社ははなっから眼中にありません.そうすると,将来の業績を考える上では期末株式を使ったEPSしか意味が見出せないんですよね.逆に頻繁に増資するような会社なら期中平均でも投資指標になるのかもしれません.
それに私は増える方より減る方,自己株取得をより気にします.自己株取得では,一旦減らしたら減ったままだろうと考えて,やっぱり期末株式で考えるのが普通だと思いますね.
>...とりあえず事業を半分に縮小...
会計学(?)的には,そういう解釈(期中に事業を縮小というところ)になるんだと思いますが,自己株を取得する企業ってのは大体,事業とは関係ないところでキャッシュがだぶついているような企業であって,そうでない企業で自己株取得する企業は(たまに目にしますが?です)興味を持ちませんね.